渋谷駅から13km、川崎市の真ん中に広がる都会の中の大自然「生田緑地」。
この緑地に隣接する、川崎市多摩区の広大な私有地が「トカイナカヴィレッジ 松本傳左衛門農園」です。
本日はこちらを見学してきたので、皆さんが知らない川崎の”農”と知られざるその課題について綴っていきたいと思います!
トカイナカとは?
皆さんの川崎のイメージと言えば何でしょうか?
多くの人が連想するのは”工業都市”だと思いますが、実は川崎市の北部は”農業”が盛んな地域です。
生田緑地などの多摩丘陵らしい自然や風土が今でも多く残っています。
また、住民の多くは昔から都心で働いているのも特徴の一つ。この川崎市北部は、「都会」に近いながらも「田舎」の良さがある地域として、都会生活と田舎暮らしの両立を体験できる場所なのです。
それをひとつの大きな仮想集落に見立てて、多様な人々が協働出来る「場」と「きっかけ」の提供を目指した構想が「トカイナカヴィレッジ」。
ちなみに、村長の松本さんは明治大学商学部の元教授だったそうです。笑
コトを通じて地域を良くする”村役場”
「トカイナカ」は、民間ならではの自由度・独自性・スピード感を活かして、地域課題に取り組んだり、行政支援の届かない領域へリーチする事を目指していると言います。
そして都市農業の新しい方向性を模索し、地域の方々への認知度を高める事によって、「川崎市の財産である農地や里山を少しでも多く残すキッカケにしたい」と助役の西山さんは仰っていました。
主に、農業と農産物を通じた体験事業や、地方のHUBとなって都市と田舎を繋ぐ慈業など、宮崎県諸塚村などの全国の地域と協働でSDGs活動に取り組んでいるそうです。
関連:トカイナカ
課題は市政に?川崎市の都市型農業が抱える事
民間であることを活かして、川崎の都市農業の振興に多大なる貢献をしている「トカイナカ」ですが、実は課題は山積していると言います。
川崎市と言えば、言わずと知れたベッドタウン。
農業を促進したり農地を守るよりも、宅地を増設した方が川崎市からしてみれば圧倒的に儲かるのが現状です。その為に、川崎市は一言で表すと「”農”に冷たい行政」となってしまっています。
都市農業には多面的機能があるのにも関わらず、それを活かせる制度設計が殆どなされていないのです。
- 農産物供給機能
- 教育機能
- レクリエーションコミュニティ機能
- 福祉・保健機能
- 防災機能
- 環境保全機能
- 景観形成・歴史文化伝承機能
関連:都市農業の6つの機能
「トカイナカ」では、これらの都市農業の多面的機能を一つ一つ何とか実現してきたと言いますが、制度が殆ど無く、”農”への関心が薄い行政では、民間で行う事に大変な苦労と限界があるのは否めません。
しかしお隣の横浜市では、”緑豊かな街を次世代に継承していこう”という目的の下で「横浜みどり税」というものを創設して、緑地や農地の保全に力を入れているのをご存知でしょうか。
2019年から2023年の間で、市民税に個人は900円、法人は9%上乗せして、「横浜みどりアップ計画」の財源としているのです。
また、東京都には「農の風景育成地区制度」があります。農地などの保全を図る為、都市計画制度を積極的に活用して、地域のまちづくりと連携しながら、行政が率先して農のある風景の保全・育成に取り組んでいるようです。
ただ、川崎市には、こうした条例や制度は殆どありません。
これのままでは都市農業の振興どころか、衰退につながりかねない状況にまで陥ってしまっているのです。
川崎市の農業を守る為には、まずは政治行政が動いて制度設計を行い、豊かな農の風景を繋いでいけるような環境を作っていかねばなりません。
「トカイナカ」に行ってみて
本日は「トカイナカ」に行かせて頂き、非常に有意義で新鮮な経験をする事が出来ました。
農家めしも美味しかった!
工業都市や再開発のイメージが強い川崎で、農業に対する意識を高められたのは非常に興味深かったです。
そして、川崎にも農業と関わりながら活動をしている若者も多くいます。そういう若者に、今まで全く農業に関心の無かった私が刺激されているのも事実。笑
これからも、川崎の農業に関心を持って自分のできる事から何か少しずつアクションを起こしていきたいと思います!
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