【観光立国日本】日本政府のインバウンド向け観光政策の流れ

観光立国日本サムネ
目次

黎明期(小泉政権~民主党政権)

政策の流れ

2003年 訪日旅行促進事業
2004年 観光立国宣言
2007年 観光立国推進基本法
2008年 観光庁

2004年、小泉元首相が施政方針演説の中で「 “住んでよし、訪れてよしの国づくり”の実現のために、観光立国を積極的に推進する」と宣言した「観光立国宣言」。

これ以来、日本政府は様々な施策を通して観光先進国を目指しています。

まず、前年の2003年4月には、訪日旅行促進(ビジット・ジャパン)事業をスタート。そして、2007年1月には観光立国推進基本法が施行、2008年10月には観光庁が発足しました。

しかし、リーマンショック(08年)や東日本大震災(11年)などが続き、奇しくも民主党政権下では観光政策は逆風にさらされます。

急成長期(第二次安倍政権)

政策の流れ

2012年 アベノミクス&観光立国推進
2013年 観光立国推進閣僚会議
    観光立国実現に向けたアクションプログラム
2014年 消費税免税の対象を全品目に拡大
2016年 明日の日本を支える観光ビジョン
2018年 ふっこう割、IR整備法
2019年 国際観光旅客税 

2012年12月に第2次安倍政権が発足すると、財政出動、金融緩和、成長戦略を「3本の矢」とするアベノミクスと共に、海外の成長を取り込む意味で「観光立国」の推進が表明されました。

そして、2013年3月には観光立国推進閣僚会議が発足し、6月には「観光立国実現に向けたアクションプログラム」が策定。これを機に、ビザの緩和やプロモーションを強化し、訪日外国人旅行者数は1,000万人を達成しました。これで勢いに乗った政府は、更に2,000万人を目指して観光施策を強化する方針を掲げます。

2014年には政府による観光立国への言及が大幅に増え、10月には外国人向けの消費税免税の対象を全品目に拡大。

2015年の旅行者数は1,974万人、消費額は3兆4,771億円に上り、この年は45年ぶりに訪日外国人旅行者数が出国日本人数を上回りました。

そして2016年に政府は、中・長期目標などを定めた「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定。2020年に訪日外国人旅行者数4,000万人、消費額8兆円、そして2030年に6,000万人、15兆円とする目標を掲げます。観光を「成長戦略の柱」と位置付け、特に地方の人口減少や地域経済の衰退といった課題を踏まえて「地方創生の切り札」として推進してくのです。

2017年には訪日外国人旅行者数が2,869万人、消費額は4兆4,162億円に上ります。「観光白書」(18年版)では、「インバウンドの効果は、旅行消費のみならず、日本経済に幅広いインパクトを与えている」「観光が日本経済をけん引する稼ぎ手に成長しつつある」という記述までされるようになります。

2018年には、西日本豪雨、北海道胆振東部地震などの自然災害に対して、政府が旅行費用を補助する「ふっこう割」が実施されるなど、観光が果たす復興への役割が明確化されます。そして、2018年の訪日外国人旅行者数は3,119万人、消費額は4兆5189億円、2019年は旅行者数で3,188万人、消費額で4兆8135億円と過去最高を記録します。

2019年1月には国際観光旅客税が導入され、インバウンドの推進に伴う政策需要の増加などに対応した観光財源が確保されます。ラグビーワールドカップ日本大会では、欧米豪の誘客や消費の拡大に一定の成果を上げ、IR(統合型リゾート)の法整備を受けて、IR設置に向けた動きも本格化。日本政府は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを弾みに訪日外国人旅行者4,000万人を達成を目指します。

停滞期~再生へ(コロナ大打撃)

政策の流れ

2020年 コロナ禍、GoTo トラベル事業
2022年 全国旅行支援、海外からの個人旅行を解禁&新型コロナウイルスの水際対策緩和
2023年 観光立国推進基本計画

東京オリンピック・パラリンピックを見据えて更なる成長を目指していた日本政府ですが、2020年初頭から世界中で蔓延をした新型コロナウイルスによって、2021年には実質インバウンドゼロ状態に陥ってしまいます。

そうしたコロナ禍においては、2020年7月より国内の観光需要策としてGoTo トラベル事業を実施。2020年7月22日から12月28日までの期間で、利用人泊数は8,781万人泊、支援額は約5,399億円になっています。

2022年10月になると、コロナ禍も少し落ち着きを見せ、政府は国内観光の促進策「全国旅行支援」を開始します。同時に、政府はそれまで1日5万人の入国者数上限を撤廃し、海外からの個人旅行を解禁して新型コロナウイルスの水際対策も緩和。つまり、これを機に国内旅行へのテコ入れおよび訪日外国人客の受け入れ拡大で、コロナ禍で苦境に陥った観光産業の活性化を狙った政策に舵を切ったのです。

2023年3月には、新たな「観光立国推進基本計画」を閣議決定。観光立国の持続可能な形での復活に向け、「持続可能な観光」「消費拡大」「地方誘客促進」の3つのキーワードをもとに、観光政策を推進します。

これによって、政府は早期達成を目指す目標として、インバウンド消費5兆円(2019年実績4.8兆円)、国内旅行消費20兆円(2019年実績21.9兆円)を掲げました。大阪・関西万博が開催される2025年に向け、質の向上を強調し人数に依存しない指標を中心に設定。持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数を現在の12地域から100地域に拡大するほか、訪日外国人については消費単価を1人あたり20万円(2019年実績15.9万円)、地方部宿泊数2泊(2019年実績1.4泊)を目指すとしました。

国内交流拡大については、旅行実施率の向上、滞在長期化を図り、日本人の地方部延べ宿泊者数3.2億人泊(2019年実績3億人泊)、国内旅行消費額22兆円(2019年実績21.9兆円)との目標を掲げました。

コロナ禍を経てなお、観光政策は「成長戦略の柱」と位置づけられているのです。

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この記事を書いた人

和合 大樹のアバター 和合 大樹 WAGO PLANNING代表

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