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史学科の大学生が、話題の『日本国紀』を読んでみた感想。 -本当に日本通史の決定版なのか




今回は大学で歴史学を学んでいる僕が、百田尚樹さんの『日本国紀』を読んだ感想を書きたいと思います。

「紀」と「記」の違い

まず最初に余談ですが、皆さんは「紀」と「記」の違いを言っていますか?

中学生なんかは『古事記』『日本書紀』の漢字を間違えがちですが、しっかりと意味を抑えておきましょう。

「記」は、日記、記録などといった熟語からわかるように、出来事をそのまま書き残すときに使います。

「紀」は、風紀、紀行などからもわかる通り、流れや規則を表すときに使います。

ここで古事記を呼んだことがある人なら、「あれ、古事記ってほぼ神話みたいな話じゃなかったっけ?」て思いますよね。その通りで古事記は神話的な、事実ではない歴史を含んでいます。しかし、天皇の神格化のために「この話は歴史的な事実ですよ」という意味を込めて「記」が使われています。

逆に日本書紀は文献を調べ、調査した歴史に基づいて順序だてて作られているので「紀」が使われているのです。

つまり今回のテーマにもどると、『日本国紀』は「文献を調べ、調査した歴史に基づいた歴史書である。」ということを作者の百田尚樹さんは伝えようとしているのですね。さあどうなのでしょうか。

▷▷北方領土問題:四島返還論に正当性はあるのか。(前編)―もともとは二島返還論だった

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大きな矛盾

僕が『日本国紀』を読んでまず思ったのは初っ端から主張に矛盾があるということです。

この本は最初から最後まで「万世一系の天皇素晴らしい!」という主張に終始しています。しかし途中で、「多くの学者が継体天皇の時に、皇位簒奪が行われたのではないかと考えている。私も十中八九そうであろうと思う。」と書かれています。

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万世一系じゃないじゃん。[/word_balloon]

せめて、「王朝交代は起こったものの、継体天皇の時代から現代まで続く天皇家は歴史と伝統があって素晴らしいものだ。」という主張に変えるとか、そもそも王朝交代を否定するかしてくれないと話の整合性が取れません。

大学のレポートであれば、この時点で百田さんは単位を貰えなさそうですね。

参考文献が一冊もない

歴史的な記述の面で突っ込みどころは他にもたくさんありますが、僕が一番気になったのは参考文献が一冊も挙げられていないことです

レポートや論文を書いた際に参考文献を挙げなければならないのは大学生でも当たり前のことです。またどこかの論文や専門書から引用した部分は注を付けなければなりません。

「事実」と言っていても、それを検証したり研究したりした論文や研究書も載せていないようでは何も信じられません。

こんな大学生でも当たり前のことすらできていないのに「日本通史の決定版!」などと宣伝されては呆れてしまいます。

百田尚樹さんの支持者の中には、「本能寺の変があった、というのが事実である以上いちいち参考文献なんかいらない。百田さんの書いていることは事実なんだから参考文献なんて載せる必要がない。」(だいぶ前に見たツイートなので詳しくは覚えてないですがこんな内容)と言って熱烈に支持している方もいましたが、全くもって意味不明です。

本能寺の変については誰でも知っている事実なので詳細について記述しない限り参考文献は不要だとしても、百田尚樹さんはただ『日本国紀』で自分の政治的主張をごり押しして自己満足しているだけです。

もし彼の主張に正統性を持たせるのなら、先行研究や参考文献をしっかり挙げて根拠を示してくれなければただの歴史小説に過ぎません。

別に歴史小説としてお話を楽しむだけならここまで叩かれずに済んだと思います。

しかし通史の決定版などと謳っておいてアレでは、何度読んでも根拠が曖昧な百田さんの考えの押し付けにしか感じず、読んでてツラかったです。

▷▷北方領土問題:四島返還論に正当性はあるのか。(前編)―もともとは二島返還論だった

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TAIKI
1999年、川崎市出身の大学生。明治大学文学部在学。趣味は歴史研究、読書、旅行。若者の政治参加推進を掲げて幅広く活動しながら、参議院議員の音喜多駿に憧れ、政治について勉強中。雑記ブログを2019年10月7日より毎日更新中。2020年10月、赤羽でBARをスタート。都内での活動を経て、2021年より衆議院神奈川10区金村りゅうな事務所スタッフとして活動中。