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川崎市のヘイトスピーチ禁止条例について誤解していませんか?
今回は話題のヘイトスピーチ条例に関して書いていきます。
僕は川崎市在住なのでこの件は注視していますが、概ねこれには賛成で、多くの市民も全体的にそうじゃないでしょうか。
しかしネット上での批判は多く、川崎市に対する悪口や、「日本人がヘイトされても韓国人は罰せられない」といった批判まで言われています。
おそらくヘイトスピーチ禁止条例を頭ごなしに批判する人達は、川崎市の事情を全く知らないうえ、SNSで得たウソか本当かもわからないような情報をもとに批判しているのではないでしょうか。
批判するのであれば、人を傷つけるような誹謗中傷をしたり、市の職員に迷惑をかけるのではなく、もっと生産的な議論をしましょう。
というわけで川崎市のヘイトスピーチ禁止条例について解説していきます。
ヘイトスピーチ禁止条例とは
川崎市は現在、ヘイトスピーチや差別的言動を禁じるために全国で初めて罰則付きの条例の制定を目指しています。(2020年2月現在可決済み)
内容はというと、
①公共の場所での、日本以外の国や地域の出身者への差別的な言動
②住んでいる地域からの退去をあおることや、身体や自由、財産などに危害を加えると扇動、告知すること
③人以外のものに例えるなどの著しい侮辱
を禁止しています。
具体的な手段としては「拡声機の使用」「看板やプラカードなどの掲示」「ビラやパンフレットなどの配布」が明記されました。
そしてこれに違反すると、市長が差別的言動をしないよう「勧告」や「命令」を行い、それでも従わず、命令から6か月以内に3回目の違反をした場合、個人の氏名や団体の名称、住所などを公表するほか、刑事告発して50万円以下の罰金を科すとしています。
「公表」の前には審査会に意見を聞くようにされており、ヘイトスピーチに対する迅速な対応と恣意的な判断の防止の両立が目指されている事がわかります。
つまり、ヘイトスピーチをしたらすぐ罰金になってしまうと誤解してる人は多いですが、勧告、命令を経て3度目の違反で初めて罰則が課されるという段階制になっており、表現の自由に最大限に配慮したかなり慎重な条例である事が見て取れますね。
川崎市の実情
コリアタウンがあり、在日韓国・朝鮮人が多く居住する川崎市川崎区では、過去に住人らを誹謗中傷する内容のデモが頻発しおり、2016年のヘイトスピーチ解消法の立法事実となりました。
現在、川崎市内では条例の規制対象となりうる誹謗中傷は減少傾向にありますが、JR川崎駅前などでは「ヘイト」をめぐる対立が定期的に今でも起きています。
ただ、そこでは条例が規制するような「朝鮮人は出ていけ」「死ね」などのヘイトスピーチに該当する誹謗中傷は表立って発せられておらず、外国人参政権反対デモvsヘイトスピーチ反対デモのようなデモが起きているだけです。
こんな感じで、ヘイトスピーチ禁止条例は過去に頻発したような誹謗中傷ばかりで暴力沙汰になりかねないデモに対する抑止力にはなり得ても、差別的表現が発せられない現在のヘイト対立の解消への抑止力や実効性はなさそうです。
ですが、今までのような誹謗中傷、人種差別的発言は少なくなっているにしても、右翼団体による在日コリアンへの差別意識は根強く残っており、今後ヘイトスピーチが行われない為にも条例を制定する意味はあると思います。
条例制定に関しての問題
このヘイトスピーチ禁止条例案は、11月15日に市長が発表し、11月25日に、市議会に提出されました。
この様子だと12月12日にも可決・成立する見込みです。(可決済み)
しかし、このヘイトスピーチ禁止条例における問題は、いわゆる「電凸」です。
担当部署である市民文化局人権・男女共同参画室では15日以降抗議の電話が相次いでいると言います。
組織的なものではないとみられていますが、多い日は十数件。27日までにのべ100件ほどになっているそうです。
10〜20分で終わるものが多い一方で1時間を超える電話も多々あり、数人の職員しかいない為、業務への影響は非常に大きいですが担当者は電話を切るわけにはいかないため、対応に悩まされていると言います。
ただの意見や苦情にとどまらず、電話口の職員を怒鳴ったり、職員の安全に関わるような「脅迫まがい」の言動も多いという報告もあり、むしろこちらの方が問題だと言えます。
電話の内容は、「なぜ韓国人へのヘイトだけに罰則を設けるのか、日本人へのヘイトはどうするのか」のような見解を述べる人が大半だそうです。
しかし、森雅子大臣は国会の答弁で、川崎市の条例の親玉にあたる2016年のヘイトスピーチ解消法について「本邦外出身者に対するものであるか否かを問わず、国籍、人種、民族等を理由として、差別意識を助長し又は誘発する目的で行われる排他的言動はあってはならない」と述べられており、今回の川崎市のヘイトスピーチ禁止条例はこれに基づいた条例として、差別行為や内容を具体化した上で段階を踏んだ注意と罰則を加えたものになります。
この答弁からもわかるように、「本邦外出身者」という規定が条文にあるからといって日本人へのヘイトが許されるという訳では断じてありません。
川崎市は同市でのヘイトデモが2016年の法律の立法事実となっているという現状もあり、もしかするとそれが再現されかねないという川崎市特有の事情も含めて「本邦外出身者」と明記しているという事のようです。
ただ、現在はその対象となるようなデモは少なく、実効性に疑問があるので、極右系の団体に対する「度を過ぎた事をするなよ」という脅しではないかと個人的には考えています。
市長は12月5日の答弁において、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであるとの基本的認識の下、適切に対処すること」という2016年の法律の附帯決議を尊重するとの発言もされており、解釈にも疑義が生じぬように適切な運用に努めると述べている事から、この条例案があらゆる差別を否定しており、日本人に対する差別を許容しているという訳ではない事がわかります。
川崎市は慎重になる必要がある
ここまで「条例案が日本人を差別しているものではない」という内容で書いてきましたが、僕もこの条例案の「本邦外出身者」という記述には最初違和感を覚えました。
いくら、日本人への差別も許されないのは当たり前だと言っても初見で見た人は「何故日本人は対象にならないのか」と疑問に思ってしまいます。
この部分に関しても、川崎市はもっと慎重になる必要があるのではないでしょうか。
■
僕は川崎市に住んでおり、在日コリアンの人とも関わりがありますが、殆どの人が良い人達で共生を望んでいます。
ヘイトスピーチ、差別をしなければ共生できます。
この記事を読んで川崎市のヘイトスピーチ禁止条例について少しでも理解してくれるとありがたいです。
※誤った記述があればご指摘お願い致します。
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PROFILE

- ブロガー大学生/バーテンダー
- 1999年生まれ、川崎市出身の大学生。明治大学文学部在学。趣味は歴史研究、読書、旅行。若者の政治参加推進を掲げて幅広く活動しながら、参議院議員の音喜多駿に憧れて政治について勉強中。2019年10月7日よりブログ毎日更新中。2020年10月より赤羽でBARをスタート。
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